ファクタリングを利用した場合の会計処理

accounting

多くの経営者の皆様が頭を悩ませる、急な資金需要の際に非常に有効な資金調達方法がファクタリングです。
しかし、実際にファクタリングを利用した場合、どのように会計処理をすべきかわからないためになかなか踏みきれない会社や、ファクタリングを利用した後で適正な会計処理の仕方を調べる会社もあると思います。

ファクタリングを利用した場合の開会処理は、仕訳の入力で使う科目など、金融機関からの融資とは異なる点があります。本記事をお読みになって、正しい会計処理方法を理解していただければ幸いです。

本記事ではファクタリングに関わる会計処理において、さまざまなケースをあげて具体的に解説していきます。また資産のオフバランス化にも触れ、融資と比べてファクタリングが有している優位性についても解説します。

目次

ファクタリングの基本的な会計処理

accounting1

ファクタリングを使った会計処理の詳細を説明する前に、まず、売上発生から売掛金回収までの会計処理の流れについて確認しておきましょう。

なるべく簡略化して理解していただくために、ここでは、印紙税や登記費用などは手数料に含むものとして考えます。

まずは売上について、以下のケースを例に考えていきましょう。
(なお、ここでは、税込経理を採用しているものとして考えます)

日付借方貸方
2021/10/10売掛金 1,100,000売上 1,100,000

以下、上記の売掛金をファクタリング会社に売却し、資金を得るということで説明していきます。

この場合、必要な会計処理は、以下の4つのケースごとに異なります。

・ファクタリングを使わず、入金日まで待つ場合
・2社間ファクタリング(即日入金の場合)
・2社間ファクタリング(後日入金の場合)
・3社間ファクタリング

では、それぞれどのような会計処理になるのか、順番に解説しましょう。

ファクタリングを使わず、入金日まで待つ場合の会計処理

ファクタリングを利用する場合と比較するために、まずファクタリングを使わない場合の仕訳を見ていきます。

入金日までそのまま待つ場合は、実際に入金された日に次の仕訳を行うことになります。

上記売掛金に対して10月末締めで請求書を発行し、1か月の支払いサイトで、入金されるのが1か月後の11月29日という場合は、以下の通りとなります。

日付借方貸方
2021/11/29普通貯金 1,100,000売掛金 1,100,000

2社間ファクタリング(即日入金の場合)の会計処理

次にファクタリングを利用する場合の仕訳です。

ファクタリングには、利用企業とファクタリング会社の2社で契約する2社間ファクタリングと、それに売掛先企業を加えた3社で契約する3社間ファクタリングがあります。

それぞれ売掛金回収のリスクに応じて手数料率が異なりますが(3社間ファクタリングのほうが手数料率は低くなります)、3社間ファクタリングでは売掛先企業にファクタリングを利用することを開示することになりますので、その後の取引への影響も考慮して、どちらかを選択することになります。

2社間ファクタリングを利用する場合でも、申し込み当日の入金が可能な場合と、後日入金となる場合があり、仕訳の仕方は微妙に異なります。

もちろん、資金調達の必要に迫られている経営者にとっては、即日入金のほうが望ましいのは言うまでもありません。入金が即日か後日かということは、以下の条件によって決まります。

・申し込んだファクタリング会社が、即日入金を扱っているかどうか
・申し込みをした時刻(早い時刻に申し込むほど、即日入金となる可能性は上がる)
・審査結果

もしファクタリングを10月31日に申し込み、即日普通預金口座へ入金された場合、仕訳は以下の通りとなります。なおファクタリング手数料は5%と仮定します。

日付借方貸方
2021/10/31普通貯金 1,045,000
売掛債権譲渡損 55,000
売掛金 1,100,000

上記のように、ファクタリング会社が差し引く手数料について、「売掛債権譲渡損」の科目を使っているということがポイントになります。

2社間ファクタリング(後日入金の場合)の会計処理

次に、残念ながら即日入金がかなわず、ファクタリング会社からの入金が後日となってしまう場合について説明します。

この場合は、仕訳を入力するタイミングが1回増えます。

まずファクタリング会社と契約を締結した時点で、以下の仕訳を入力します。

日付借方貸方
2021/10/31未収入金 1,100,000売掛金 1,100,000

契約を締結した時点で入金予定日と金額は決まりますが、まだ実際に入金されているわけではありません。

したがってこの時点では、「未収入金」の科目を使って仕訳を入力することになります。

そして、実際にファクタリング会社からの入金があったタイミングで、以下の仕訳を入力します。

日付借方貸方
2021/11/5普通貯金 1,045,000
売掛債権譲渡損 55,000
未収入金 1,100,000

3社間ファクタリングの場合の会計処理

次に3社間ファクタリングの場合について説明します。

上にも書いたとおり、3社間ファクタリングを利用する場合、契約成立には売掛先の承認が必要になります。このため申し込んだ即日に入金されることは考えにくく、入金は後日になるケースが大半です。

実際に入力する仕訳とタイミングは、「2社間ファクタリング(後日入金の場合)」と同様です。

ファクタリングにともなう様々な手数料や税の会計処理

accounting2

ファクタリングを利用する際の基本的な会計処理については、これまで解説したとおりです。ただし手数料などの仕訳については、内容により仕訳内容が異なりますから注意が必要です。

ここでは手数料や印紙代、登記費用、司法書士報酬について、どのように仕訳すべきかを解説していきます。

なお、ファクタリング利用におけるこうしたコストについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考になさってください。

ファクタリングにかかるコストを分解してみた

ファクタリング手数料

前項の説明でも書きましたが、ファクタリングにかかる手数料を仕訳で入力する際、その科目を「手数料」にしないように注意してください。

このような場合は、「売掛債権譲渡損」という科目を使用します。もしこの科目がない場合は、「割引料」を使用しても問題ありません。

印紙代や登記費用

ファクタリング会社との契約には、収入印紙を貼付する必要があります。

この印紙代をファクタリング会社ではなく利用企業が負担する場合は、仕訳に入力しなければならないことになります。

またファクタリング会社によっては、債権譲渡登記を求められる場合があります。

そのような場合には、登記費用(登録免許税)が必要になります。これも別途負担する場合は、やはり計上する必要があります。

上に書いたような費用の科目は、どちらも「租税公課」を使います。

さきに説明した「2社間ファクタリング(後日入金の場合)」において、印紙代と登録免許税を別途請求された場合は、入金時の仕訳は以下のとおりとなります。
(なお印紙代は200円、登録免許税は7,500円とします。)

日付借方貸方
2021/11/5普通預金 1,045,000
売掛債権譲渡損 55,000
未収入金 1,100,000
2021/11/5租税公課 7,700現金 7,700

上記のとおり、印紙代や登録免許税を支払う必要がある分、入金される金額が減ってしまうことになります。

司法書士報酬を支払う場合

ファクタリング会社によっては、前項に書いた債権譲渡登記を司法書士に依頼する場合があります。

その場合は司法書士報酬が発生することになりますので、それを別途請求される場合もあります。

この費用には、別途消費税がかかりますので、注意が必要です。

上記のケースで税別5万円の司法書士報酬を支払った場合、仕訳は以下のように変わります。

日付借方貸方
2021/11/5普通預金 1,045,000
売掛債権譲渡損 55,000
未収入金 1,100,000
2021/11/5租税公課 7,700
支払報酬 55,000
現金 62,700

ここでは税込経理を仮定しているため、司法書士報酬の科目「支払報酬」には税込みの金額である55,000円を入力しています。

もし税抜経理の場合は、以下のようになります。

日付借方貸方
2021/11/5普通預金 1,045,000
売掛債権譲渡損 55,000
未収入金 1,100,000
2021/11/5租税公課 7,700
支払報酬 50,000
仮払消費税 5,000
現金 62,700

報酬に加算される消費税は「仮払消費税」という科目を使うことがポイントです。

以下の記事もあわせてご参照ください。

ファクタリングに消費税は原則不要!仕訳の方法を解説します

事務手数料などの場合

ファクタリング会社によっては、手数料以外に審査費用などの金額が差し引かれる場合もあります。

この場合は、実態に合った科目に計上することとなります。

たとえば実態がファクタリング手数料ならば、「売掛債権譲渡損」の科目を使用します。

ファクタリング契約から入金までの会計処理のポイント

accounting3

ファクタリングの会計処理においては、手数料以外にも注意しておきたいポイントがあります。

たとえば、掛目の扱いについても注意が必要です。

ここでは掛目について、また融資や利息に関する科目を使うかどうかについて説明します。

掛目が設定された場合

ファクタリングを利用する場合は、掛目が設定される場合があります。

この場合、入金されるタイミングが2回に分かれるということが特徴です。

例として、掛目が80%であるケースを考えてみましょう。

売掛金に対する割合入金されるタイミング備考
80%ファクタリング会社の審査終了後手数料が差し引かれる
20%売掛先からの入金後

したがって、以下のように仕訳を入力することになります。

・契約時に対象となる売掛金について、「未収入金」で仕訳する
・入金されるごとに仕訳を入力する

具体的な仕訳内容は、あとで説明する「売掛先から入金された時点での会計処理」の項を参照してください。

ファクタリングは融資ではないので、利息に関する科目は使わない

ここまで、利息や融資に関する科目が出てこないということに、お気づきになったかもしれません。

金融機関からの融資で用いられるような科目と、ファクタリングで用いられる科目は異なるのです。

それは、ファクタリングそのものに理由があります。

そもそもファクタリングというのは、売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらう契約のことです。

これは売掛金を担保として融資を行う「売掛債権担保融資」とは異なり、以下の特徴があります。

・売掛金を売却して得た資金は、自由に使える
・月々の返済が不要。したがって、利息も徴収されない
・負債が増えない
・利息制限法の適用を受けない

このように、ファクタリングと融資は異なるものです。

融資ではないので、融資や利息に関する科目は使わないのです。

ファクタリングにおける消費税の会計処理

accounting4

経営者としては、ファクタリングを利用するにあたって、消費税の扱いがどうなるかということも気になるという方もいらっしゃると思います。

・ファクタリングの利用により、納税する消費税額に影響するか?
・ファクタリングの利用に消費税はかかるか?

それぞれの疑問について、順にお答えしていきます。

売上に関する消費税は、ファクタリングを使ったからといって変わらない

ファクタリングを活用した場合、納付すべき消費税がどうなるのでしょうか。

もし減税となれば、ファクタリングを節税のテクニックのひとつとして活用できるということになりますが、増税となる場合は、ファクタリングを利用するかどうか躊躇してしまう場合もあるかもしれません。

実際は、ファクタリングを利用することで売掛金を早期に現金化したところでも、納付すべき消費税の額は、支払サイトを経て通常の手続きで売掛先企業から入金されるのを待った場合と変わりません。

ファクタリングを利用することで二重に課税されるという心配は不要ということになりますが、利用しない場合と同様なので、ファクタリングの利用は節税対策にはなりません。

ファクタリング利用の際にかかる消費税は、司法書士報酬に限られる

さきに解説した通り、ファクタリングは原則非課税です。唯一、消費税が課税される項目は、司法書士へ支払う報酬に限られます。

ただし、にもかかわらず、ファクタリング会社の中には、消費税を請求してくる会社もあるかもしれません。

その場合は、ファクタリング会社に理由をしっかり確認し、不審だと感じられた場合には契約を踏みとどまることをお勧めします。

ファクタリング会社に支払わない費用の会計処理

accounting5

ファクタリング会社に利用を申し込むと、まずは面談を要求されることでしょう。

自社の近隣で営業しているファクタリング会社に申し込むなら問題はありませんが、電車などを使ってファクタリング会社まで移動しなければならないことがほとんどだと思います。

ファクタリング会社は大都市に集中していますから、地方で事業を営んでいる会社の場合は、宿泊を要するという場合もあるかもしれません。

もし対面でのやり取りが不要な場合でも、契約書などをやり取りするには郵送費などの経費もかかります。

こうした経費の会計処理も、やはり適正に処理しておきたいものです。

それぞれ、どのように仕訳すべきかを解説していきます。

ファクタリング会社までの交通費

ファクタリング会社での面談に訪れる目的で電車やバスなどを利用した場合は、「旅費交通費」科目に計上します。

たとえば渋谷から上野まで往復し、従業員のICカードで精算した場合は、以下の科目で計上します。

日付借方貸方
20/10/31旅費交通費 396現金 396

ただし業務用のICカードを支給している場合は、貸方の科目が以下のように変わりますから注意が必要です。

日付借方貸方
2021/10/31旅費交通費 396預け金 396

ファクタリング会社との面談に要する新幹線代や、宿泊を要する場合のホテル代

地方から都市部のファクタリング会社に出張するような場合は、新幹線での移動や、都市部での宿泊についても考慮する必要があります。

この場合は短距離の交通費と同様、旅費交通費の科目に計上します。

ファクタリング会社への資料郵送

対面をせずに契約を行えるファクタリング会社もあります。この場合、郵送などによって書類のやり取りを行うことになります。

郵送などにかかる経費の計上は「通信費」科目を使用します。

たとえば契約書類をレターパックプラスで発送した場合は、以下の仕訳となります。

日付借方貸方
2021/11/4通信費 520現金 520

ファクタリングを利用し、売掛先から入金された時点での会計処理

accounting6

さて、ファクタリングを利用した場合は、ファクタリング会社から入金を受けた後で、その売掛金の入金が売掛先企業から行われることになります。

このお金は契約通りファクタリング会社に送金しなければならないものです。

この売掛先から入金された時点で会計処理が必要となる場合があります。必要かどうかは、契約時での掛目の有無によって変わります。

ここでは以下の3つのケースに分けて、それぞれ解説していきます。

・掛目なし
・掛目あり(2社間ファクタリング)
・掛目あり(3社間ファクタリング)

掛目なしの場合の会計処理

「掛目なし」の契約を締結した場合、売掛先からの入金日に行われる処理は以下の通りとなります。

・2社間ファクタリングの場合は、入金額を全額、速やかにファクタリング会社に送金する
・3社間ファクタリングの場合は、売掛先からファクタリング会社に直接送金される

したがって、入金日には収入も支出も発生しません。このため、入金日の会計処理は特に必要ありません。

2社間ファクタリングで、掛目ありの場合の会計処理

もし「掛目あり」の契約を結んだ場合は、売掛先から入金された時点で、一度、仕訳の入力をすることが必要になります。

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングではお金の流れが異なるため、仕訳の内容も異なります。まずは2社間ファクタリングから確認していきましょう。

前提として、契約時に以下の仕訳が入力されているものとします。

また掛目は80%、手数料は5%、それ以外の費用は発生しないと仮定します。

日付借方貸方
2021/10/31未収入金 1,100,000売掛金 1,100,000

この110万円の売掛金をファクタリング会社に売却する契約を行ったものとします。

まず、ファクタリング会社から買い取り代金が入金された時点で、以下の通り仕訳を入力します。

日付借方貸方
2021/11/5普通預金 836,000
売掛債権譲渡損 44,000
未収入金 880,000

ファクタリング会社に買い取られた売掛金は、110万円の8割相当となる88万円となることに注目してください。

手数料は掛目適用後の金額に対して5%かかりますから、44,000円となります。

そして、売掛金の入金日を迎え、売掛先から110万円が入金されると、以下の対応になります。

・ファクタリング会社に買い取られた88万円を、ファクタリング会社に送金する
・残りの22万円は手元に残る

したがって売掛先から入金された際には、ファクタリング会社に買い取られなかった部分の売掛金について、以下の仕訳を入力します。

日付借方貸方
2021/11/29普通預金 220,000未収入金 220,000

3社間ファクタリングで、掛目ありの場合の会計処理

3社間ファクタリングの場合、売掛金はいったんファクタリング会社に入金された後、掛目が適用されなかった部分(留保金)が入金されることになります。

一方で、仕訳については、2社間ファクタリングの場合とおおむね同様です。

ただし留保金は売掛先からの入金日ではなく、後日入金される場合もあります。

上のケースでファクタリング会社からの入金が12月2日になった場合、仕訳は以下の通りとなります。

日付借方貸方
2021/12/2普通預金 220,000未収入金 220,000

なお2社間・3社間の違いについては、以下の記事もご参照ください。

2社間ファクタリングなら 迅速・秘密裡に資金調達可能

ファクタリングで資産のオフバランス化が可能

accounting7

ファクタリングを活用して資金を調達した場合、その分、貸借対照表(BS)から資産と負債を減らすことができます。これは「資産のオフバランス化」と呼ばれ、以下のメリットがあります。

・同じ額の利益をより少ない資産であげられるため、総資産利益率(ROA)が上がる
・自己資本比率がアップする

売掛金は「資産の部」、借入金は「資産と負債の部」にそ計上されますので、融資で資金を調達する場合は負債のほうが多くなり、「自己資本比率」が下がることはもちろん、資産も多いままであるため、総資産利益率(ROA)も下がってしまいます。

これにくらべてファクタリングを活用することで資金を調達した場合は、融資のような「借入金」として計上されません。

加えて「売掛金」を現金化し事業に使うわけですので、そのぶん「資産」も減ることになります。

このため、自己資本比率と総資産利益率(ROA)をアップでき、健全な経営をアピールすることができます。

最後に私たちレイトラストについてもふれさせていただきます。

レイトラストでは2社間ファクタリングを専門に扱っており、全国の経営者の皆様の急な資金調達にお役立ちいただいております。

手数料も業界標準より安価な3~15%で提供しており、印紙税や登記費用といった不明瞭な費用は一切いただいておりません。お申込み当日の調達にも対応しております。

急な資金調達の必要に迫られ、お困りの際は、ぜひ私たちレイトラストにご相談ください。


お気軽にお問い合わせください。03-6273-9607受付時間 10:00 - 18:00 [ 土日・祝日除く ]

お問い合わせはこちら お気軽にお問い合わせください。