わかりやすく解説!売掛金の仕組みと特徴
経営者にかぎらず、ビジネスに携わる方なら、「売掛金」という言葉を耳にしたことがない方はほとんどいないでしょう。
売掛金は企業活動にとってそれほど欠かせない仕組みです。
しかしながら、お金を直接扱わない業務に携わっている方の中には、もしかしたら、売掛金という言葉を聞いたことはあるけれど、じつはよくわかっていない、という方もいるかもしれません。
社会人デビューする人も、どういうものかを知らない人はいるでしょう。
「売掛金」の仕組みは広く用いられているものでありながら、普段の日常生活ではあまり使われることのない言葉だからです。
今回は、売掛金とはなにか、またその仕組みについて、初めての方でもわかりやすく解説していきましょう。
売掛金を超わかりやすく説明
最初に書いたように、売掛金は企業活動に欠かせないものです。
社会人として、売掛金がなにかということを知らないでいるのは、ちょっと恥ずかしいかもしれません。
「普段の日常生活ではほとんど使われない言葉」と上に書きましたが、じつは、気がつかないうちに、売掛金の仕組みそのものは、日々の生活でもよく活用されています。
意外に身近な売掛金とは、どのようなものなのでしょうか。
今も残る「 マスター、ツケといて! 」
物を買ったりサービスを提供してもらったら、代金を支払います。
売掛金というのは、この代金を支払う方法のひとつである「後払い」と深い関わりがあります。
昔の言葉では「ツケ」と言いました。
映画やドラマ、小説、マンガなどで、バーなどの飲み屋で代金を支払わず「マスター、ツケといて!」と登場人物が言っているのを目にしたことがあると思います。
この「ツケ」というのは勘定書きのことで、商品を買ったり飲食した代金をその場で支払わずに、後日まとめて支払うことを「ツケ払い」と言います。
マンガなどでは、主人公の給料日やボーナス支給日に会社の通用口で集金人が待ち伏せている昭和的な場面がありましたよね。
あれは、たまっているツケを集金しようと、各お店の集金人やママが待ち構えているわけです(主人公は集金人の群れを見て、なんとかその場をやり過ごしてツケを踏み倒そうとします)。
バーなどの飲み屋の代金をツケ払いにすることがよく行われていたのは、接待を行う店が決まっていて、会社が接待費を経費として月末などに精算していたからでしょう。
マンガの主人公の場合、よく、関係のない飲食まで会社に「ツケ」ていたりするので、問題があるわけです。
そんなイメージから、「いつもニコニコ現金払い」が通常の代金精算方法であり、ツケをためて払うことはあまり良いことではないと、なんとなく思いこんでいる人もいるのではないでしょうか。
「ツケ払い」は、江戸時代に生まれたものだと言われています。
当時の商人は、お得意さんとの決済を「お盆前」「年末」という年2回にまとめて行っていました。
今では少なくなってしまいましたが、酒屋さんや米屋さん、クリーニング屋さんなど、「お勘定は月末で結構です」という昔ながらのお店もあります。
でも、毎日配達されている新聞代や、毎日の電話代や水道代を「いつもニコニコ現金払い」で毎日支払っている人はいないと思います。つまり、普通にツケ払いをしているのです。
ですから、ツケ払いは決して“悪いこと”ではなく、じつはほとんどの人が行っている、ごく当たり前の商習慣だといえるのです。
ツケとは、後払いの際に発生する債権
さて、このツケ払い=後払いを少し細かく見ていきましょう。
後払いを利用すると、将来受け取る権利のある、あるいは支払う義務のあるお金というものが発生することになります。これを「債権」といいます
・物やサービスを提供した側にとっては「将来お金を受け取る権利」(売掛債権)
・物の購入やサービスを利用した側にとっては「将来お金を支払う義務」(買掛債務)
「ツケ」はあくまでも物やサービスの代金の後払いのことで、お金そのものを貸し借りすることとは異なります。
営業活動に関係のない債権は、売掛債権とは呼びません。
ただお金を貸すのと、ツケとは違いますから、注意しておきましょう。
上でいう「売掛債権」のうち、銀行振込など現金や預金で入ってくる予定の債権のことを、売掛金と呼んでいます。
つまり、電気代やガス代は、電気会社やガス会社にとっては売掛債権、利用者にとっては「買掛債権」です。
このように、売掛金というのは、普通の生活に根づいています。
手形に代わって企業間取引ではよく使われる売掛金
企業の取引では、仕入や商品の販売などで売掛金が使われます。
月末などの「締め日」になると、その月の売り上げ代金をまとめて請求書を発行し、取引先に送付します。
そして、受け取った取引先は、あらかじめ決められた日数(これを支払いサイトと呼びます)の後に、請求書に記載された金額を銀行振り込みします。
企業が取引の代金を支払うことを決済と呼びますが、この決済には、売掛金以外に「手形」というものがあります。
しかし、売掛金が手形よりも優れているのは、期日になった際に代金を回収する手間が少なく済むということです。
請求書に記載した金額がちゃんと入金されているか、自分の会社の銀行口座をチェックするだけで済みます。簡便なので、近年での企業間取引では手形はほとんど使われなくなりました。
支払う側にとっても、わざわざ手形を振り出す手間がいらず、受け取った請求書に書かれた期日に指定された銀行口座に振り込めばいいだけで済みます。
銀行振り込みがなかった昔のツケ払い精算は、現金のやりとりですから、場合によってはお釣りもいるし、集金人がなくしたり横領してしまうこともあるし、集金日を狙って強盗が来るかもしれませんし、簡単なものではありませんでした。
簡単に銀行振り込みができることになって(今ではさらにネット取引ができるようになって)、売掛金はごく一般的な決済方法になっているわけです。
売掛金のメリット・デメリット
売掛金のメリットとデメリットを整理してみましょう。
売掛金の発生から回収までの流れ
売掛金はどのようにして発生し、どのタイミングで回収されるか、もう一度振り返ってみましょう。
売掛金の発生から回収までの流れ
- 顧客が物の購入、あるいはサービスを利用した際に、代金の後払いを申し出る
↓ - 売主(物やサービスを提供した企業)は顧客に対し請求書を発行し、売掛金の金額と回収日を指定する
↓ - 顧客は指定した期日に請求書に記載された方法で入金し、売主は売掛金を回収する
※「顧客」は、法人の場合も個人の場合もあります。
売掛金というものを知る上で、ビジネス/会計上の言葉で理解することは重要です。
売掛金は、顧客が代金の後払いを申し出て、売主が承認した時点で発生します。
企業のなかには電気やガス料金のように、提供の際に現金払いすることがむしろ難しく、当たり前のように後払いになっているものもありますが、基本的には、電気会社、ガス会社と「後払いの契約」を結んでいるのであり、この基本的な流れは同じです。
売主は物やサービスを提供した都度、あるいは期間を区切って請求書を発行します。
一般的には、1ヶ月単位で区切り、請求書を送る運用が普通です。「月末締め翌月末払い」や「月末締め翌々月末払い」というふうに締め日と支払日を設定するわけです。
請求書を受け取った側では、期日までに記載されている方法で入金を済ませる必要があります。
その方法としては銀行振込がよく用いられます。
売主の指定した口座へ振込むわけで、売主は、この入金を自分の取引銀行で確認し、これをもって売掛金が回収されたことになります。
売掛金にはリスクがあるため、与信管理を行う場合が多い
先に書いたように、売掛金のデメリットとして「取引先が倒産などした場合、回収できなくなることがある」というリスクがあります。
代金をその場で回収せずに物を売ったりサービスを提供するわけですから、このリスクはどうしても避けることはできません。
そして、回収できない売掛金の額が大きくなると、売掛債権をもつ企業の経営に大きな影響を与えます。
ここでもう一度、江戸時代のたとえに戻りますが、当時ツケ払いを許されるのは「おなじみのお得意さん」だけでした。
初めて顔を見るような新参者や、どこに住んでいるのかわからないような者は、その場で代金を受け取っておかないと取りっぱぐれてしまうかもしれませんから、ツケ払いは許されませんでした。
今でも、電気代やガス代のツケ払いが許されるのは、そこに居住している住所がわかっているからです。
免許証や保険証などの身分証明があれば、「どこの誰だかわからない」状態ではなくなりますから、ツケ払いを許されるようになります。
しかし、ツケ払いが許される状態になっても、代金を支払うことができなくなる可能性はあります。
企業の場合、それが倒産などの事態です。
企業との間で売掛金を利用した取引を行う場合は、事前に各社で与信管理を行ったり、取引先ごとに売掛金として計上できる上限金額を設定したりすることになります。
与信管理というのは、その企業の資本金や従業員数など公にされているデータから信用度をランク付けすることであり、そのランクによって、「ツケで売ってもいい」上限金額を設定するわけです。
与信管理のための情報収集は、具体的には次のようなものがあり、多種多様です。
・すでに社内にある情報を活用する
・顧客から直接聞き取る
・Webに掲載されている企業情報などを活用する
・取引先から情報を得る
・調査会社など、専門業者に委託する
可能なかぎりたくさんの情報を活用した上で、取引先に対して与信可能な金額を決めます。
「なじみのお得意さん」として信頼してもらうのも、なかなか大変です。
ファクタリングを活用すれば売掛金を早期に現金化できる
売掛金には、「取りっぱぐれてしまうリスク」のほかに、もうひとつデメリットがありました。
それは「入金されるまでタイムラグがあること」です。
これは、ツケで買う側にとってはメリットですが、物やサービスを提供する側にとってはデメリットです。
会社の経営をしていくと、どうしても資金が足りない場合や、急に資金が必要となるケースが生じることがあります。
それは商品が売れなかったり、お店にお客さんが来てくれないからではなく、代金が回収するまでのタイムラグがあるためということがあるのです。
「〇日になれば入金があることは決まっているのに、今はお金がない……」
そんな悩みに直面する経営者はたくさんいます。
売掛金のままでは、急な資金需要に対応することは難しく、資金繰りに苦慮することになってしまうのです。
こうした売掛金のデメリットを解決できる方法が、ファクタリングです。
ファクタリングを利用すれば、期日と金額が確定した売掛金さえあれば、現金化することが可能になります。
ファクタリングは、金融機関などから融資を受けるよりもずっと簡単です。審査時間が短いことがファクタリングの特徴ですから、スピーディな資金調達のニーズにはぴったりの方法です。
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