ファクタリングの仕訳方法を会計基準に沿って解説

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企業の資金調達方法のひとつであるファクタリングは、金融機関からの融資などにくらべて敷居が低く、緊急の資金需要にも対応できるため頼りにしている経営者もたくさんいます。

ただし、融資とは異なるため、このファクタリングを利用するうえで、会計基準による定めがあり、企業会計においては、この指針に沿った運用が求められることになります。

本記事ではこの指針について解説し、その後で、指針に沿ったファクタリングの仕訳方法について解説していきます。

加えてファクタリングにおいては消費税が非課税になること、ファクタリング手数料は損金で処理できる(売掛債権譲渡損)ことについても解説していきます。

また最後に、国際財務報告基準にのっとった仕訳方法についても解説します。

ファクタリングには会計基準による定めがある

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企業経営において、ファクタリングによって資金を調達した場合、会計上ではどのように処理すべきなのでしょうか。
日本税理士会連合会他4団体は、ファクタリングの利用を「資産の譲渡」であると定めています。これは、つまり融資ではないということです。

まず、この点について説明していきましょう。

ファクタリングは「資産の譲渡」という定義が定められている

会計基準におけるファクタリングの定めについては、日本税理士会連合会などの4団体が連名で公表している「中小企業の会計に関する指針」において、以下のように記載されています。

14.金銭債権の譲渡
手形の割引又は裏書及び金融機関等による金銭債権の買取りは、金銭債権の譲渡に該当する。したがって、手形割引時に、手形譲渡損が計上される。

【 引用元 】

日本税理士会連合会、他「中小企業の会計に関する指針」(平成 31 年2月 27 日)

わずか2行の文章だけなので拍子抜けしてしまうかもしれませんが、これによって「ファクタリングは資産の譲渡である」ということが示されています。

ファクタリングの対象となる売掛金は、上記で定められている「金銭債権」に該当します。

そしてファクタリング会社にその金銭債権を売却して資金調達を行うことは、「金融機関等による金銭債権の買取り」ということにほかなりません。

このため、日本においてはファクタリングは融資ではなく、資産の譲渡として公的に認められていることになりますから、企業会計における仕訳も、この基準に沿って起こす必要があります。

ファクタリングは融資とは異なる資金調達方法

前述したとおり、ファクタリングは融資とは異なります。

なぜなら資金を調達した後、契約当事者に以下のような義務が課されないためです。

・利息を支払う義務がない
・元金を返済する義務がない

そもそも、元金の返済義務があったり、利息を支払ったりしなければならない資金調達方法は、ファクタリングではありません。

それは「売掛債権担保融資」であり、別のものであると言えます。

このようにファクタリングは融資と異なりますから、融資を受けたことを信用情報機関に登録されることもありません。

ということは、すでに多額の融資を受けており、債務超過となってしまっている企業であっても、ファクタリングなら利用できる場合も多いということになります。

ファクタリングを利用した場合の仕訳は?

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それでは、企業会計基準にのっとってファクタリングを利用すると、どのような仕訳となるのでしょうか。

それぞれのケースについて、解説していきます。

ファクタリングを契約した場合

企業会計におけるファクタリングの仕訳は、現金が入金されたときからではなく、ファクタリングの契約を締結したときから始まります。

なぜかというと、ファクタリングの契約を締結した時点で、ファクタリング会社との間で売掛金の売買契約が成立しているためです。

ファクタリングの契約日を2021年11月25日と仮定すると、実際に入力する仕訳は以下の通りになります。

日付借方貸方
2021/11/25未収入金 2,200,000売掛金 2,200,000

上記のとおり、ファクタリング契約を締結した時点で、利用企業にとっては、ファクタリング会社から売掛金の売却額を受け取る権利が生じることになります。

この売却額は営業活動による収入とならないため、借方の仕訳は「未収入金」という科目を使用する必要があります。

「契約した時点」ということは、ファクタリングを申し込んでも審査に通らなかったり、条件の折り合いがつかなかったりした場合は含まれていません。

そのような場合は、基本的には何も仕訳を起こす必要はないでしょう。ただ、ファクタリング会社によっては、「審査料」といった名目の費用を請求するところもあります。

そうした支払いをしなければならなかった場合は、その旨の仕訳を起こす必要があります。

多くのファクタリング会社では、審査するだけで料金を請求することはありませんが、中にはそのようなファクタリング会社もありますので、申し込み以前にきちんと確認すべきでしょう。

ファクタリング会社から入金された場合

さて、売掛債権を売却する契約が締結され、実際にファクタリング会社からその代金が入金されると、ファクタリング利用会社では資産が増加することになります。

このため、以下の仕訳を起こす必要があります。(ここでは、ファクタリング手数料を10%と仮定しました。)

日付借方貸方
2021/11/28普通預金 1,980,000
売掛債権譲渡損 220,000
未収入金 2,200,000

ファクタリング会社から入金された金額は、売掛債権そのままの金額ではありません。

ファクタリングには手数料がかかりますので、譲渡した売掛金から手数料が差し引かれた額が入金されるはずです。このため「未収金」は、「売掛債権譲渡損」「売掛債権売却損」という2つの科目に分かれることになります。

もちろん、実際に入金された金額については、入金された口座や手段に合った方法で仕訳を入力する必要があることは、いうまでもありません。

私たちレイトラストもそうなのですが、ファクタリング会社によっては契約した当日に入金してもらえる場合もあります。

この場合は、契約時の仕訳と入金時の仕訳を統合できることになりますので、わざわざ仕訳を分ける必要がありません。以下のようにひとつの仕訳で処理しても構わないということになります。

日付借方貸方
2021/11/25普通預金 1,980,000
売掛債権譲渡損 220,000
未収入金 2,200,000

またファクタリング会社の審査結果によっては、売掛金の全額を買い取るのではなく、掛目が適用される場合があります。

この場合でも契約時の仕訳は変わりませんが、入金時の仕訳は、以下の通りに変わります。(ここでは、掛目が80%の場合を例に示します。)

日付借方貸方
2021/11/28普通預金 1,584,000
売掛債権譲渡損 176,000
未収入金 1,760,000

ファクタリング会社が、220万円の売掛金のうち、掛目にあたる8割相当分である176万円しか買い取っていないことがわかります。

掛目が適用された部分についてのみ仕訳を起こしていることになります。

この場合、手数料も売掛金全体の10%にあたる22万円ではなく、あくまでもファクタリング会社が買い取った部分の10%に当たる176,000円になります。

ただし、契約の際には、この点もよく確認しておいたほうがいいでしょう。

掛目が適用された場合の仕訳については、以下の記事もご参照ください。

介護報酬ファクタリングのデメリットにもご注意

印紙税を徴収された場合

じつは、ファクタリングの契約書は、以下に示す「債権譲渡に関する契約書」に該当しています。

このため、印紙税の対象となる「課税文書」にあたることになるので、印紙税の納税が必要になります。

(厳密には、1万円未満の場合には印紙税は不要ですが、実際には1万円未満のファクタリング契約というものは考えにくいので、印紙税は必ず必要になるとおぼえておいたほうがいいでしょう)

債権譲渡又は債務引受けに関する契約書(第15号文書)
債務譲渡………債権をその同一性を失わせないで旧債権者から新債権者に移転することをいいます。

【 引用元 】

国税庁「印紙税の手引き」

印紙税の金額は200円です。

印紙税はファクタリング会社が負担する場合と、利用企業が負担する場合があります。

もし利用企業で印紙税を負担する場合は、以下の仕訳を入力しなければなりません。

日付借方貸方
2021/11/28租税公課 200現金 200

上記のとおり、税金は「租税公課」という科目を使用して入力します。

登記費用を支払った場合

登記費用は、登録免許税と、司法書士に支払う報酬で勘定科目が異なります。ただし、これらの費用をファクタリング会社が負担する場合は、利用企業の側で負担するのは不要ですので、仕訳の入力も不要です。

まず、登録免許税は、債権譲渡の登記をする場合に必要な税金です。したがって印紙税と同じく、「租税公課」の科目を使います。法務省の「債権譲渡登記手数料の変更について」によれば、登録免許税の金額は、原則として1件当たり7,500円です。

このため、実際の仕訳は、以下のとおりとなります。

日付借方貸方
2021/11/28租税公課 7,500現金 7,500

債権譲渡登記は、司法書士など専門家に依頼して行う場合もあるでしょう。

そうした場合の司法書士への報酬は消費税の課税対象となりますから、別途10%の消費税も支払わなければならないことになります。

これらの勘定科目は、以下のとおりとなります。

・司法書士など、専門家に対する報酬:「支払報酬」
・報酬にかかわる消費税:「仮払消費税」

実際の仕訳は、以下のとおりとなります。

税込経理の場合と税抜方式の場合で、処理が異なるということにご注意ください。

会計方式日付借方貸方
税込方式の場合2021/11/28支払報酬 55,000現金 55,000
税抜方式の場合2021/11/28支払報酬 55,000
仮払消費税 5,000
現金 55,000

その他の費用を支払った場合

ファクタリング会社によっては、事務手数料などといったその他の費用を請求される場合もあるかもしれません。

この場合は、支払った費用の名目というより、その費用が実体として何なのかという点に着目して仕訳を起こすことが求められます。

たとえば、事務手数料が実際には手数料の一部を構成しているような場合は、「売掛債権譲渡損」に含めて計上することになります。

売掛先から入金された場合

次に、売掛先から入金された場合の仕訳について説明します。

仕訳の必要があるかどうかは掛目の有無により変わります。

・掛目なし(全額買い取り)の場合:仕訳不要
・掛目ありの場合:ファクタリング会社に買い取られなかった部分について、仕訳の入力が必要

これは、ファクタリング利用企業とファクタリング会社の2社で契約する「2社間ファクタリング」を利用するのか、それに売掛先企業も加えた3社で契約する「3社間ファクタリング」を利用するのかといったことによっても変わってきます。

2社間ファクタリングを掛目なしで利用した場合、売掛先からの入金額は全額ファクタリング会社へ送金する義務があります。

3社間ファクタリングの場合は、そもそもファクタリング利用企業への入金自体がなく、売掛債権の売却代金は売掛先企業からファクタリング企業に直接入金されます。

どちらにしても会計上の入金額はゼロであるため、仕訳は不要となるわけです。

一方で、掛目ありの場合は、それを仕訳する入力が発生します。

たとえば220万円の売掛金を掛目80%で買い取ってもらった場合は、残りの2割相当(44万円)が未収入金のままとなっています。

このため売掛先から入金された際に、以下の入力が必要です。

日付借方貸方
2021/12/27普通貯金 440,000未収入金 440,000

日付は入金日を意味しています。

2社間ファクタリングの場合は売掛先から、3社間ファクタリングの場合はファクタリング会社から送金された日となります。

ファクタリングの利用に関わる勘定科目

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これまで解説したとおり、ファクタリングの利用には以下の勘定科目が関係します。

一覧でまとめてみましょう。

利用状況勘定科目備考
契約の締結時未収入金、未収金
ファクタリング
即日入金の場合は、未収入金など
に代えて「普通預金」「当座預金」
「現金」なども使える
ファクタリング会社からの入金時(入金先)
普通預金、当座預金、現金
実際に資金を入手した方法、または
入金された口座にあわせて選ぶ
ファクタリング会社からの入金時(手数料)
売掛債権譲渡損、売掛債権売却損、割引料
消費税は課税されない
印紙税、登録免許税租税公課
司法書士への報酬(報酬部分)支払報酬
(消費税)仮払消費税
消費税が課税される項目

またコストについては以下の記事でもまとめていますので、あわせてお読みください。

ファクタリングにかかるコストを分解してみた

ファクタリングと税

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ファクタリングの利用においては、消費税や法人税への影響も考慮する必要があります。

ただしファクタリングを利用することで、なにか悪い影響が出ることは基本的にはないと言えます。

各々について、どのような取り扱いとなるか、解説を進めていきましょう。

ファクタリングを利用しても、納税する消費税額に影響することはない

ファクタリングを利用すると、少なくともファクタリング手数料を支払うことになりますので、売掛債権が支払いサイトを経て入金される場合にくらべると手に入る代金が減ることになります。

このため、消費税額が減ると期待してしまうかもしれません。

しかし、残念ながら、消費税の納税額は、売上額によって決まりますので、消費税額の変化はありません。

消費税の成り立ちについて考えてみましょう。

そもそも消費税は、売掛先から「預かる」という性格を持っています。

したがって、ファクタリングを利用する、しないにかかわらず、顧客から預かった税額をきちんと精算し、間違いなく納税しなければならないわけです。

一方で、ファクタリング会社から売掛金の買取代金を受け取ったからといって、その入金された金額に消費税が課税されることもありません。

また売上高の計上において、非課税売上高に含める必要もないため、課税売上割合に影響を及ぼすことはないわけです。

したがって、ファクタリングの利用有無に関わらず、消費税額は売上高と仕入額に基づいて計算し、納税することになります。

この点は、安心してファクタリングを利用できるポイントのひとつとしてあげられます。

消費税が課税される項目は、司法書士報酬に限られる

では、売掛債権の売買代金以外の諸費用に関してはどうなるでしょうか。

じつは、ファクタリング会社に直接支払う費用のうち、消費税が課税される費用は、司法書士に支払う報酬だけなのです。

その他の費用は原則として非課税です。

ファクタリング会社の中には、さまざまな費用に消費税をプラスして請求してくるような会社もあるかもしれません。

そうした場合に備えて、契約前に消費税を請求する理由についてきちんと確認しておくべきです。

もし以下のような回答をするファクタリング会社の場合は、他の会社をあたったほうがいいかもしれません。

・印紙税や登録免許税にも消費税をプラスしてくる
・手数料が非課税であることを知らず、すべての項目に消費税をプラスして請求してくる

ファクタリングと消費税の関係については、以下の記事でも解説しています。

ファクタリングに消費税は原則不要!仕訳の方法を解説します

ファクタリング手数料は損金にできるため、法人税の節税になる

ここまで説明してきたとおり、ファクタリングを利用することによって消費税額が変わることはありませんが、一方で、法人税の金額が変わる場合はあり得ます。

なぜなら、会計上、ファクタリング手数料は損金として扱われますので、利益から差し引けるためです。

ご存じのとおり、法人税は利益に対して課税されますから、ファクタリング手数料に応じた金額を節税できるわけです。

法人税率は企業規模などによって異なりますが、15.0%~23.2%と高率です。ということは、ファクタリング手数料の2割前後が戻ってくる計算になります。

ファクタリングを利用することによって節税できる法人税額は決して少額ではありません。

国際財務報告基準(IFRS)の場合、ファクタリングは負債となる

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もし国際財務報告基準(IFRS)の適用企業である場合、ファクタリングはどのような扱いになるでしょうか。

この場合、日本での会計基準(以下、日本基準と略)とはファクタリングの扱いが異なることになります。

どのような点に違いがあるか、相違点を確認していきましょう。

ファクタリングを契約した時点

この時点では、ファクタリング会社に売掛金を譲渡しても、国際財務報告基準(IFRS)では売掛金がまだ消滅していないとみなされます。

そのため日本基準と異なり、とくに仕訳を起こす必要はありません。

ファクタリング会社から入金された時点

国際財務報告基準(IFRS)では、ファクタリング会社から買取額が入金された時点で、以下の仕訳を起こす必要があります。

日付借方貸方
2021/11/28普通預金 1,980,000
売掛債権譲渡損 220,000
借入金 2,200,000

日本基準では用いられなかった「借入金」という科目が出てきました。

じつは国際財務報告基準(IFRS)が日本基準と異なる点として、「ファクタリングも借入の一種」とみなされるという点があげられます。

このため貸方は「借入金」として計上する必要があります。

もちろん、掛目が適用された場合は、その分ファクタリング会社からの送金額も少なくなりますから、この額に沿って仕訳を起こします。

掛目が8割の場合は、以下の仕訳となります。

日付借方貸方
2021/11/28普通預金 1,584,000
売掛債権譲渡損 176,000
未収入金 1,760,000

このように、国際財務報告基準(IFRS)では、ファクタリングを利用しても、上に述べたような「資産のオフバランス化」をできないことになりますので、注意が必要です。

売掛先から入金された時点

国際財務報告基準(IFRS)では、売掛先から入金された時点で、ファクタリングの利用有無に関わらず仕訳の入力が必要です。

まずは掛目なしのケースを考えていきましょう。

日付借方貸方
2021/12/27借入金 2,200,000売掛金 2,200,000

考え方は「入金した売掛金で、ファクタリング会社から入金されたお金を返す」というものです。

掛目が適用された場合は、掛目の対象外となった部分が普通預金や現金として計上されることになります。

掛目が8割の場合は、以下のようになります。

日付借方貸方
2021/12/27借入金 1,760,000
普通預金 440,000
売掛金 2,200,000

レイトラストは手数料体系がシンプルで安価なことが魅力

本記事でくわしく解説したように、ファクタリングを利用した場合は企業会計のルールに沿ってひとつひとつの仕訳を起こしていく必要があります。

ファクタリング会社によっては、様々な手数料や印紙代、登記費用などを求められる場合もありますので、すべてを適切な科目で入力するのは大変面倒で煩瑣です。

私たちレイトラストの場合は、請求する費用は「手数料」のみですから、ご利用企業の経理業務も非常に簡素で、処理を間違えるリスクも最小で済みます。

また、私たちの手数料は3%~15%と、業界標準にくらべると低率でご利用いただけるようになっています。

ファクタリングをご利用の際は、ぜひ手数料がシンプルで安価なレイトラストにご相談ください


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