売掛債権とは? 早期に事業資金へ変える方法を解説

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企業会計に詳しくない方にとっては、「売掛債権」という言葉は耳慣れない言葉かもしれません。

これは経理や企業経営ではよく出てくる用語ですから、経理の担当者はもちろん、経営者にとってもおぼえておきたい言葉です。

経営者は、自社の事業を継続していくために、会計全般に責任をもたなければなりません。

たとえば資金が不足して立ち行かなくなるようなことが起こったとき、知らないでは済まされません。

そのような場合、急ぎで資金を調達する際には、この売掛債権が重要なポイントのひとつになります。

さらに、売掛債権の種類ごとに対応方法が異なることも知っておいたほうがいいでしょう。

本記事では、まず売掛債権の種類や特徴、リスクなどについて解説します。その後、早期に現金化する方法やメリットについて触れていきます。

そもそも売掛債権とは?

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まず、売掛債権とは、何でしょうか。

企業というものは、営業活動を行うことによって顧客に商品やサービスを提供し、その対価として代金の支払いを受ける権利を得ます。

これが売掛債権です。

売掛債権がたしかに存在するということを示す書類(たとえば請求書)には、以下の項目が必須です。

・債権の金額
・債権を支払うべき日
・支払う方法
・債権を支払う会社や、受け取る会社の名前

売掛債権の主なものとして、売掛金と受取手形があげられます。

また、未収金との違いについても解説していきましょう。

売掛債権には、売掛金と受取手形がある

売掛債権には、売掛金と受取手形の2種類があります。

この二つの特徴は、それぞれ以下のとおりです。

項目売掛金受取手形
定義手形以外の方法で、指定された期日に代金を受け取る権利約束手形などが振出され、期日に代金を受け取る権利
フォーマット決まったフォーマットはない 請求書や支払通知書が代表的銀行など、金融機関が発行する用紙を使わなければならない
支払わない場合の ペナルティ未払い分の支払いを求められる 法的措置を受ける場合もある左記に加えて不渡りとなるため、原則として融資は受けられない 半年以内に2回不渡りを出すと、銀行取引停止処分を受ける
支払方法銀行振込が主流であるため、支払当日に指定口座へ入金される 受取人は待てばよいことが多い支払期日を含め3日以内(3日目が金融機関休業日の場合は、翌営業日まで)に、金融機関へ提出(取立の委任)が必要 また支払われるまでには、取立の委任をした日を含めて3営業日を要する

売掛債権と未収金との違い

企業間で取引をすることによって発生する債権がすべて売掛債権になるわけではありません。

そのような債権には、他に未収金(未収入金)があります。

未収金と売掛債権は、以下の点が異なります。

売掛債権 ・・・ 企業の営業活動で発生した債権

未収金 ・・・・・ 企業の営業活動以外で発生した債権

営業活動というのは、本業かどうかということです。

未収金に計上できる債権は、以下のとおりさまざまです。

これらは、本業として行っている場合は売掛債権となり、そうでない場合は未収金となります。

・株式や社債など、有価証券の売却代金
・売掛金をファクタリング会社に売却した場合、入金される予定の金額
・土地や建物など、不動産の売却代金
・車や備品などの売却代金

たとえば製造業を営む企業がファクタリングを契約し、代金の入金が後日になる場合を考えてみましょう。

この場合、代金の入金までは「未収入金」で仕訳を行います。

売掛債権の発生から回収までのサイクル

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次に、売掛債権はどのように発生し、どのタイミングで回収されるのでしょうか。

また売掛債権を収入としてよいタイミングは、どの時点なのでしょうか。

ここでは、売掛債権の発生から回収までのサイクルを解説します。

売掛債権が発生するタイミング

売掛債権が発生したとみなすタイミングは、売上が計上された段階です。

たとえば2020年7月15日に200万円の売上が計上された場合、仕訳は以下の通りとなります。

日付借方貸方
2020/7/15売掛金 2,000,000売上 2,000,000

自社の口座に振込まれるといった方法で入金される場合は、このまま入金日を待つ形になりますが、相手企業によっては、後日手形を振出される場合もあります。

その場合は、以下の仕訳を入力します。

日付借方貸方
2020/7/15受取手形 2,000,000売掛金 2,000,000

場合によっては、売上が計上されたと同時に、受取手形が振出されるケースもあるかもしれません。この場合は、以下の入力方法も可能です。

日付借方貸方
2020/7/15受取手形 2,000,000売上 2,000,000

売掛債権とは、会計上は収入として計上されるがまだ入金されていない状態

売掛債権には、以下にあげる特徴があります。

・会計上は収入として計上される
・入金はまだされていないため、資金やキャッシュフローには反映されない
・資金繰り表には、将来の入金予定として計上される

つまり、売掛債権というのは「収入は増えたものの、お金はまだ得ていない」状態です。

このため、売掛債権を取引先への支払いに使う場合は、さまざまな制約があります。

とくに売掛金の場合、そのままの形では支払いに使うことはできません。

売掛債権は入金をもって回収される

売掛債権は、取引先からの入金をもって回収されることになります。

ここでは、例として、入金が2020年7月31日に行われた場合を考えてみましょう。

まず、売掛金が普通預金口座に入金された場合の仕訳は、以下の通りとなります。

日付借方貸方
2020/7/31普通貯金 2,000,000売掛金 2,000,000

もし手形の金額が当座預金口座に入金された場合は、以下の仕訳となります。

日付借方貸方
2020/7/31当座貯金 2,000,000受取手形 2,000,000

売掛債権の発生から入金までの期間は、取引先によりさまざま

売掛債権の発生から入金までの期間(支払いサイト)は、取引先によりさまざまに異なりです。

多くの場合は、「月末締め翌月末払い」や「月末締め翌々月払い」といったように、発生から1~2ヶ月で支払われることが多いでしょう。

しかし、それより長い支払いサイトを指定する売掛先もないわけではありません。

とくに受取手形の場合は、支払われるのが数ヶ月先になる場合もよくあります。

このため、取引を始める前に、その会社の支払条件を確認することは必須です。

もし、あまりに入金までの期間が長いため、資金繰りに支障をきたしてしまうことが明らかであるような場合には、その会社とは取引をしないという決断も十分ありえます。

売掛債権は、必ず支払われるとは限らない

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売掛債権は、口座振込であれ、受取手形であれ、どのような形であっても受け取る権利があります。

ところが、現実においては、売掛債権が必ず支払われるとは限りません。

その理由には以下の通り、さまざまなものがあります。

売掛先の経営不振(資金繰りの悪化など)
・商品やサービスが提供されていない
・受け取った商品に瑕疵がある
・売掛先企業の手続きミス

もし売掛先企業が手形の振出によって代金を支払おうとしている場合、一度でもその手形が不渡りになってしまうと、その企業はその後の融資など企業を存続するための大きなダメージを負ってしまうリスクを有しています。

ですから、売掛先も、その手形が不渡りにならないように極力手を尽くして努力するでしょう。

ただし、口座振込などの形によって代金を支払うことになっている場合は、期日通りに振込を行わなくても、金融機関からなんらかのペナルティを受けることはありません。

このため、期日になっても振込が行われないといったルーズな対応をする企業も、世の中には存在します。

取引先にそのような対応をされると、どんな経営者様でも困ってしまいます。

このため、売掛元企業は、売掛債権の支払日や支払方法をきちんと管理しておき、期日通りに支払われたかどうかをチェックし、もし支払われなかった場合は、速やかに回収へ動くことが求められます。

ただし、事務手続き上の単純ミス(たとえば期日が土祝祭日だった場合は、その前営業日に振り込む企業もあれば、翌営業日に振込を実施するというルールの企業もたくさんあり、ルールは一定ではありません)という可能性もありますから、まずは売掛先に電話やメールなどで状況を確認することから始めるのがいいでしょう。

事務上のルールの違いだけで事を荒立ててしまうと、その後の良好な取引関係が壊れてしまうこともあるからです。

また売掛先ごとの与信枠を設定しておき、その金額の範囲内でしか取引をしないことも、会社を守るひとつの方法であると言えます。

売掛債権を早期に事業の運営資金へ変える方法

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売掛債権は、現金ではないものの、資金を受け取ることが約束されている権利ですから、不動産や有価証券などと同じく、企業における大事な資産のひとつです。

そうしたことから、現金化を行い、事業の運営資金にする方法があります。

事業資金が不足した場合に、売掛債権を現金化することで窮地を救われた経営者もたくさんいます。

具体的に、売掛債権を早期に事業の運営資金へ変えるにはどうすればいいのでしょうか。

その方法は、以下に示す3つに分けられます。

売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらう

最初の方法は、売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、事業資金にあてるということです。

売掛債権という資産を売却することには、以下のようなメリットがあります。

・返済の義務がない
・資金を自由に活用できる
・2社間ファクタリングの場合は、審査期間が短い

ただし、この方法は、ファクタリング会社にファクタリング手数料を支払うことになるため、売掛債権そのままの金額の現金を受け取ることはできません。

手数料率はファクタリング会社によってまちまちですが、中には25%もの手数料を徴収するファクタリング会社もありますから、事前によく調べてファクタリング会社と契約をすることをお勧めします。

また、ファクタリングには、ファクタリング利用企業とファクタリング会社とで契約する2社間ファクタリングと、それに売掛先企業を加えた3社で契約する3社間ファクタリングがあります。

一般的には、ファクタリング会社の回収リスクが低いために3社間ファクタリングのほうがファクタリング手数料は低くなりますが、3社間ファクタリングでは、売掛先企業にファクタリングを使用することを了解してもらわなければならなくなります。

また、契約にも期間を要するため、実際に資金を手に入れるまでに日数がかかります。

2社間ファクタリングでは、即日で売掛債権を現金化できるファクタリング会社も存在しています。

手形割引を行う

売掛債権を手形という形で所有している場合は、その手形を銀行や手形割引業者に持参し、買い取ってもらうという方法もあります。

この際も、売掛債権の額面そのものを手にすることはできません。

手形の支払期日までの金利を差し引かれ(割引料)、残りの額を受け取ることになります。

額面に記載された金額よりも実際に支払われる金額が少なくなることから、「手形割引」といわれています。

この割引料は、買取ってもらう先によって異なります。

銀行は割引料が低い一方で、審査に日数を要する可能性があります。

手形割引業者に手形を買い取ってもらう場合は、審査が早く、銀行が買い取れない手形も扱ってくれるというメリットがありますが、割引料は銀行よりも高額になりがちです。

手形割引については、以下の記事もご参照ください。

今さら聞けない 「ファクタリングと手形の違い」とは?

売掛債権担保融資を受ける

売掛金を運営資金に変える方法はもうひとつあります。

それが売掛債権担保融資です。

売掛債権担保融資とは、その名のとおり、売掛金を担保に差し出して融資を受ける方法です。

売掛債権担保融資のメリットは、融資の一種ですから、利息制限法の適用を受けることになり、利率は最大でも以下の通りになり、高額な手数料を徴収されるリスクが下がるということです。

・100万円未満:年18.0%
・100万円以上:年15.0%

一方で、売掛債権担保融資は、融資ですから審査を受ける必要があります。

また、売掛債権を売却するのではなく、あくまでも担保にしてお金を借りるということですから、融資を受けた後は、月々の返済が必要になりますので、これもデメリットと考えられるでしょう。

とくに毎月のように売掛債権担保融資を利用しつづけてしまうと、あっという間に月々の返済額が膨らんでしまうような事態に陥りかねませんので、ご利用には注意が必要です。

譲渡制限特約がついている売掛債権でも現金化できる

じつは、売掛債権の中には、譲渡禁止の特約がつけられている場合があります。

そのような売掛債権は、ファクタリングや売掛債権担保融資を利用することはできません。

2020年4月1日の債権法改正により、たとえ契約で譲渡の禁止や制限をする事項が記されている場合でも、債権の譲渡が可能になりました。

経済産業省でも、以下のアナウンスを行っています。

改正法では、債権が譲渡されても債務者の弁済先固定に対する期待は保護されていること等を理由として、以下のような法務省の解釈が出ております。

・資金調達目的での債権譲渡については、契約の解除や損害賠償の原因とはならない。
・譲渡されても特段の不利益はないにもかかわらず、取引の打切りや解除を行うことは、極めて合理性に乏しく、権利濫用等に当たり得る。

【引用元】経済産業省 債権法改正により資金調達が円滑になります

したがって、現在は譲渡禁止の特約がついた売掛債権であっても、ファクタリングなどを利用した資金調達を安心して行えます。

売掛債権を現金化するメリット

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売掛債権は、黙っていれば売掛先から入金され、好きな用途に使うことができるものですが、それを事前に現金化することは、決して後ろめたい方法ではありません。

むしろ、早めに現金を用意することは、事業資金を確保して企業経営がスムーズに行えるようになるメリットとも考えられます。

ここでは売掛債権を現金化し、経営に役立てるメリットを紹介します。

それぞれのポイントについて、順に確認していきましょう。

融資を受けずに資金を調達できる

1点目のメリットには、金融機関などから借入をすることなく資金調達できるという点です。

融資を受けるには会社にその金額の返済能力があるか審査を受けることになります。

つまり、必ず資金を調達できるとはかぎりません。

多くの融資では、担保を求められたり、経営者本人が保証人となることを求められたりします。

この場合、経営者の負担が増してしまいます。

一方で、たとえばファクタリングの場合は、売掛先の信用さえあれば容易に現金化することができます。

もちろん保証人なども不要ですから、経営者個人の負担も増えることはありません。

不動産や有価証券がなくても、資金調達が可能

「うちはオフィスも賃貸だし、とくにこれといった資産を持っていないから、もし資金不足になった場合には、どこかから借りるしかない」と考える経営者も多いと思います。

ただ、それは売掛債権も資産であることを忘れていると言えます。

売掛債権という資産を売却すれば、後ろ指をさされるような方法に頼らずに現金を調達でき、資金不足の危機を乗り越えることができます。

「借りられなかったらどうしよう」という不安がありませんので、経営者にとって大きなメリットがあります。

業績不振の企業やベンチャー企業でも利用できる

さきにも書いた通り、売掛債権を現金化する際に最も重視される項目は、「売掛先が期日通りに支払ってくれるかどうか」という点です。

この点さえクリアできれば、資金調達は難しくないでしょう。

一般的に考えれば、赤字が続いてしまっているような企業、あるいは創業間もないベンチャー企業などは、金融機関から融資を受けることが難しい場合がほとんどです。

しかし売掛債権の現金化ならば、このような企業でも資金調達が可能になるのです。

急ぎで資金を調達したい場合でも、2社間ファクタリングなら対応可能

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ここからは売掛金を現金化する「ファクタリング」のメリットを取り上げます。

融資の中でもビジネスローンなら即日融資も可能かもしれませんが、金融機関から融資を受けようとすると、審査はかなり厳重なものになります。

提出するための資料をそろえるのも一苦労ということになり、急ぎの資金調達には間に合わない可能性があります。

この点、上述したように、2社間ファクタリングを利用することで、申し込み当日に入金を受けることが可能になる場合があります。

もちろん、手続きや審査をしなくてもいいわけではありませんので、即日の資金調達を希望する経営者は、早めにファクタリングを申込むことが鉄則です。

売掛先から入金がない場合でも、ファクタリングなら代わりに支払う義務がない

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売掛債権をもとにした資金調達を行う際には、売掛先から入金がない場合という万一のときにどうなるか、その扱いも知っておくことが重要です。

以下の表で確認していきましょう。

資金を調達した方法売掛先から入金がない場合の扱い
ファクタリングノンリコースの場合、ファクタリング会社への返金は不要
手形割引売掛先の代わりに請求が来るため、支払う義務を負う
売掛債権担保融資期日通り返済が必要

上記の通り、売掛先から入金がなくても、自社が影響がないという方法は、ノンリコースのファクタリングを利用した場合だけです。

ただし、ファクタリング会社がどこもノンリコースであるとはかぎりません。

もしノンリコースでなければ、他の方法と同様に、売掛先から入金がないと利用企業が代わってファクタリング会社に支払わなければなりません。

したがって、ファクタリングを利用する際は、ノンリコースであることを必ず確認しましょう。

レイトラストのファクタリングは、もちろんノンリコースです。

ご心配することなく、安心してご利用ください。

資金調達にお困りの際には、ぜひレイトラストへご相談ください。


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